少子化の影響は社会の各分野に及んでいる…


 少子化の影響は社会の各分野に及んでいるが、その一つが大学運営へのダメージ。8月には大手予備校の代々木ゼミナール(東京)が全国にある拠点の大幅縮小を発表した。これも少子化に伴う受験人口の減少が理由だ。

 全国に86ある公立大学にとっても「ひとごとではない」(総務省幹部)とみられている。公立大と言えば、以前は教育学部に地元出身の学生を迎え、地域の学校に人材を送る機関だったが、近年は少子化で存在感も低下した。

 このほど総務省と文部科学省は、地方の公立大の魅力を高め、若者の地方離れに歯止めをかける対策の検討に乗り出した。地元企業との連携強化を通じ、地域経済活性化の中心として活躍できるよう12月にも意見をまとめる。

 従来、公立大のほとんどは産業とは離れた立場に置かれ、実践的な研究とは関係が薄いままで存在し続けたから改革は容易ではない。こうした中で地場産業の人材育成や伝統的な技術再生に取り組む国立大や公立大の先行的な試みを挙げると――。

 山梨大では、山梨県果樹試験場でのブドウ栽培からワインメーカーでの醸造まで一貫教育を行っている。人材の質を確保するため「ワイン科学士」の認定制度を設けている。

 ほかに鹿児島大は焼酎や黒酢などの伝統産業、八戸工業大(青森)はフラットパネルディスプレーの技術者を育てる。目に見える成果はこれからだが大いに参考になろう。