このほど発表された文化庁の「国語に関する…


 このほど発表された文化庁の「国語に関する世論調査」によれば、「世間ずれ」という言葉を、多数の国民が「世の中の考えから外れる」と理解している。本来の意味の「世間を渡ってずる賢くなる」と回答した国民は少数だ。

 「ずれ」は漢字で書けば「擦れ」。濁って「ずれ」となった。「すれていて、純真さがない」という意味だ。一方、「ずれている」の「ずれ」は漢字が存在しないが、あるべき位置から外れている、ということ。「世間ずれ」は、全く違った意味で受け止められていた。

 が、それは「ありうる間違い」だ。似たケースが「煮詰まる」という語。議論の場で使われるが、「議論が進んで結論を出すべき状態」と正解した人は半数を超える。

 が、一方で「議論が行き詰まる」と理解するケースも40%に達する。「煮詰まれば動きがとれない」。だから結論は無理、との解釈は、一応スジが通っている。

 「正しい言葉」というのも相対的なものだ。言葉は生き物だから、変化も当然だ。例えば「適当」。昔は「ほどよい」の意味だったが、ここ30年ほどの間で「いい加減」という意味が優勢になった。

 手元の辞書では「ほどよい」と「いい加減」の両方が載っているが、昔の辞書には「いい加減」はなかったはず。新しい流れが定着することもあれば、いずれ忘れられることもある。言葉の変化に対応するのは必要だが、新しい流れにむやみに迎合するのも避けたい。