今年は開戦から100年ということで、第1次…
今年は開戦から100年ということで、第1次世界大戦に関する新刊書が多数出ている。新刊ではないが、大分前に入手しながら読まずにいた草光俊雄著『明け方のホルン 西部戦線と英国詩人』(みすず書房)をこの機会に読んだ。
英国では、第1次大戦に従軍した詩人、文学者が多くの戦争詩を遺している。それらの詩人は「戦争詩人」として、英国近代詩の中の重要な一画を占めている。同書は、7人の戦争詩人についてのエッセーである。
戦争詩人で最も有名で、英国人から愛されているのが、ルパート・ブルック。ブルックは、名門パブリックスクール、ラグビー校からケンブリッジ大学に進むが、第1次大戦の勃発で兵士として志願し、28歳で戦病死した。彼が愛されるのは、大変な美男子であったこともあるが、やはり詩がいい。
有名な「兵士」と題する詩は<もし私が死んだら、このことだけを考えて欲しい/異国の戦場の片隅に/永遠にイングランドがある>と始まる。
ブルックが卒業したラグビー校を以前訪ねて驚いたのは、同校には第1次、第2次大戦で戦死した卒業生のための記念礼拝堂があることだ。戦没者の分厚い名簿があり、案内してくれた在校生がブルックのところを開いて見せてくれた。
ノブレス・オブリージュ(高貴なる者の義務)の実践に対する敬意であろう。日本の大学にも戦没者の慰霊碑はある。しかし、もっと敬意が払われていい。