「日本では、もともと『働く』とは“はた…


 「日本では、もともと『働く』とは“はた(傍)”を“らく(楽)”にする、幸せにするということです。レイバーでなくネイバーズ(隣人の)ハッピネスであり、苦役の意味は含まれていません」。

 先日(社)公益資本主義推進協議会主催で「これからの教育の『在り方』」をテーマにシンポジウムが行われた。グローバル人材や起業家の育成についての質問にパネリストの一人、田坂広志多摩大学大学院教授が答えた一部がこれ。「働く」ことの意味とその自覚の必要性をズバリ言い表している。

 売り手よし、買い手よし、世間よしの「三方よし」の精神にも通じる。今ある物心ともの豊かさを気づかせ、使命感を育む教育を行う中にグローバル人材や起業家を生み出す素地が生まれる――これが同シンポジウムの結論でもあったように思う。

 幸い日本人には商いだけでなく、生活の隅々とりわけ家庭の中で周りを喜ばせることを動機にし持ち場に励むという伝統もある。

 田坂教授は経営フォーラムも主宰するが「むしろ今、日本のような豊かな境遇に生まれてありがたい、社会に貢献したいという観点から新しい事業に取り組む若い方々が増えている。一攫千金狙いの若い方は多くない」との分析に希望が持てる。

 政府は起業支援、グローバル人材育成に取り組むが、これらの勘所を見落とさないように。単に英語を話せるようにすればいいのではない。