「万一起きてしまったときの被害、災害が…
「万一起きてしまったときの被害、災害が極めて深刻であれば、当然十分な対策を講じることが求められる」(村上陽一郎著『安全学』青土社)。国の危機管理について述べた一文だが、企業の自己防衛、危機管理も変わらない。
村上氏は「起こったと想定したときに被害をできるだけ少なくすること」とも。760万件の顧客情報が流出した「進研ゼミ」などで知られるベネッセコーポレーションのケースはどうか。
既に顧客データベースを保守管理していた同社のグループ企業から再委託された外部業者の従業員が漏洩(ろうえい)に関与した疑いが出ている。システムエンジニア(SE)の派遣社員で、SEのIDを使っていとも容易に外部に持ち出した可能性がある。
事実なら、ベネッセ側に危機管理について少なからず甘さがあったと言わざるを得ない。中心事業である通信教育を40年以上続けている企業にとって顧客名簿保持は生命線だ。
今日、通信教育の業界は競争が過熱気味で、個人情報が漏洩すれば顧客を不安に陥れることになる。もちろん、流出名簿を手に入れ顧客獲得に利用した同業者の倫理も厳しく問われる。
1960~70年代、家電販売競争が激化した折、自社製品が消費者の元で度重なる事故を起こしたM電器は「トラブルを踏み台に製品管理している」と揶揄(やゆ)され一時業績を落とした。いつの時代も顧客への対応がおざなりの企業活動は成り立たぬ。