回遊距離2400キロのニホンウナギや、…
回遊距離2400キロのニホンウナギや、時に5000キロを超える渡り鳥の存在はつとに知られている。それには劣るが、シマウマの群れが季節ごとに直線距離で往復計約500キロを移動するというダイナミックな生態が明らかになった。
世界自然保護基金(WWF)の研究チームなどがアフリカ南部のナミビアとボツワナの国境付近のシマウマ1500頭を2年にわたって観察、このほど科学誌に発表した。
この群れは乾期にナミビア北東部の大きな川の流域にいて、雨期になると南へ約250キロ離れたボツワナ北部の国立公園へ移動する。乾期の生息地から比較的近い所にも餌の草の豊富な地域があるが、移動は先祖から受け継がれ習性になっていると考えられる。種の保存への欲求の強さに恐れ入る。
しかし近年、柵のある農場や牧場が増えて伝統的な移動パターンが妨げられているケースがあり、研究チームは野生動物の保護への配慮の必要性を指摘している。
地球上では多様な生物が共存し、万物の霊長である人間が地球環境を守って種の保存を促す立場にある。今回のような研究報告は「共生はいかにあるべきか」という地球規模の問題を人類に鋭く突きつけている気がする。
遠いアフリカの話というのではない。わが国でも、さまざまな生物が棲息する里山一つ守れないようで、どうする、といった動植物の叫びが聞こえてきそうだ。