福島第1原子力発電所で増え続ける放射能…


 福島第1原子力発電所で増え続ける放射能汚染水対策として、原子炉周辺への地下水流入を防ぐ「凍土壁」の設置が行われる。凍土壁とは文字通り、原子炉建屋周囲の土を凍らせて造る「壁」。

 今回、1㍍間隔で地中に入れた管にマイナス30度の冷却液を循環させ、地下約30㍍までの土壌を凍結させる。これが厚さ約2㍍、総延長約1500㍍の壁となり、同原発1~4号機の建屋の周りを囲むことになる。ずいぶんと大掛かりな工事だ。

 この凍結工法は、トンネル工事などにおける土留めや止水に威力を発揮。地下鉄の都営新宿線や東京メトロ半蔵門線のトンネル掘削事業でも取り入れられており、わが国が誇る土木技術の一つだ。

 疑問は、土木工事でうまくいっても、果たして原子レベルの要素が絡むシールド工事で通用するのかどうかだ。日本は歴史的に地震や洪水、津波などの自然災害が多く、復興をばねに発展してきた面もあるが、土木技術の進歩改良も並行してあった。

 『日本書紀』には、斉明天皇が香久山から石上山までの間に溝を掘らせ、舟200隻に石上山の石を載せ流れを下らせ、それを積み上げ両槻宮という高殿を造ったという記録がある。こういった大胆な発想は歴史の中で時に必要だろう。

 地下水は1日に約400㌧流入し、敷地内のタンクにたまった汚染水は35万㌧以上に上っている。凍土壁が抜本対策となるかどうか、注視したい。