「六月や禰宜(ねぎ)の袴のうす浅葱…


 「六月や禰宜(ねぎ)の袴のうす浅葱(あさぎ)」(佐野ヽ石)。きょうから6月に入る。稲畑汀子編『ホトトギス新歳時記』(三省堂)では「野山は緑におおわれ、風物はことごとく夏の姿となる。早苗が植えられ、梅雨が来る」とある。

 このところの暑さは、既に夏の盛りを思わせる。とはいえ、まだ関東地方は梅雨入りをしていない。じめじめした梅雨が明けてはじめてジリジリと肌を焼くような暑さになるのが例年の気候だとすれば、今年は少し異常かもしれない。

 気象庁のホームページに「平成26年の梅雨入りと梅雨明け」(速報値)が出ており、関東甲信地方は空白となっている。梅雨入りは平年で8日ごろ、昨年は10日ごろ。いずれにしても、もう間近ということだけは確かである。

 梅雨といえば、雨の中に咲くアジサイを思い出す。今は公園や道路の側溝沿いに、まだ咲く前の青白い姿を見かけるだけだ。桜のように華やかではないが、あの青や赤紫の花は梅雨の情景としっくり溶け合っている。

 鎌倉はアジサイの名所として知られ、特に「アジサイ寺」の通称がある明月院は有名だ。毎年、この季節には多くの観光客が訪れている。

 「紫陽花の色の揃はぬ盛りかな」(真鍋蟻十)。アジサイの花言葉には「移り気」「変節」「冷たい」など、あまりいいイメージではないものがある一方、「辛抱強い愛情」「元気な女性」などもある。物事にはプラス面もマイナス面もあることを教えているようだ。