国家間の紛争や問題が多いこの頃、各国政府の…
国家間の紛争や問題が多いこの頃、各国政府の報道官の会見をテレビで観(み)ることが多くなった。その語り方は、どの国も概してクールだが、それでもちょっとしたところに国柄、体制が反映される。
報道官ではないが、事実上その役割を果たしているのが、北朝鮮の朝鮮中央テレビのアナウンサーだろう。金正日総書記が存命中、よく登場した女性アナウンサーは、その大袈裟(おおげさ)な語り方など、まるで講談師のようだった。張り扇を持たせれば、さぞ様になるだろう。
反対に中国外務省の華春瑩報道官は、いかにもクールで理性的な印象を与える。しかし、南シナ海の領有権を争う海域での中国公船によるベトナム船への体当たりなどに抗議して起きたベトナムの反中暴動についての会見は、異様に抑制されたものだった。
「中国企業や中国人に対する殴打、破壊、強奪、放火などは、ベトナム側が、国内の反中勢力や不法分子を放任していたことと関係がある」などと述べるだけだった。中国人が16人も死亡しているとの報道もあるのに、である。
中国の国営メディアの新華社通信や中国中央テレビも、中国人の死者が多数出ているという情報を黙殺して、国民には知らせなかった。中国国内で反ベトナムの抗議行動が起き、それが当局批判に飛び火することを恐れたのか。
いずれにしても国民の生命より体制維持を優先していることは明らかだ。この国の本質がそこに表れている。