日本の製造業に、生産・調達で国内に回帰する…


 日本の製造業に、生産・調達で国内に回帰する兆しが出てきた。円安基調、海外の人件費上昇などで、例えばキヤノンは新製品の生産はできるだけ国内で対応する考えを示している。またダイキン工業は中国企業に委託してきた日本向け家庭用エアコンの生産の一部を、国内に移管することを決めた 。

 日銀が各支店からの聞き取り調査を基にまとめたリポートもその傾向を示している。福島、横浜、大阪各支店は、電機や自動車関連のメーカーが中国から国内への生産回帰を実施・検討していると説明 。

 これまで製造業の海外生産比率は円高が進行した1980年代後半からほぼ一貫して上昇。2012年度は20・6%に達した。大企業だけでなく中小企業も生き残りの戦略として海外進出を進め、その結果、国内では産業の空洞化が進んだ 。

 この間、1993年に制定されたリストラ法は、中小企業の海外生産を促進した。結果的に見て得策であったか、疑問が残る 。

 今日、大企業でもそうだが、中小企業内で技術継承の問題が大きい。団塊世代の退職によって、マニュアル化しづらい技術を受け継ぐことが困難になる恐れが指摘されている。こうした問題解決のためのテコ入れが必要だ 。

 中長期的には「海外生産拠点の拡充の基本方針は変わらない」(日銀調査統計局)見通しだが、国内産業を立て直し、体制を整えて海外進出していく好機でもある。