大教授になるにはその専門分野で日本一で…


 東大教授になるにはその専門分野で日本一であることが必要、と『東大教授』(新潮新書)という本に書かれている。著者沖大幹氏も東大教授だ。日本一であれば、学歴が高卒であってもOK。建築家の安藤忠雄氏がそうだった。

 日本一どころか世界一になることも難しくはない、という。専門分野を絞り込んでいけば、それを専門とする人物は彼(彼女)一人、ということもありうるのだから、おのずから世界一になる。もちろん、東大教授になれるかどうかは別問題だ。

 専門分野を自分で切り開くことができる、というのが学問の面白さだ。スポーツの世界だったらそうはいかない。「100メートル走があるのだから、15メートル走があってもいいじゃないか」と考えても、そんなものは誰も認めない。

 博士論文は独自性がなければならず、その意味では世界一の基準が求められると言える。だが、世界一であるかどうかを分かる人間がこの世にいるのか?と考えてしまうと、論文の審査はできない。

 実際のところは、その論文がこれまで誰も研究したことのない分野について詳細な内容を含んでいればいい、とされているようだ。

 本になった文学系の博士論文を最近読む機会があった。原稿用紙千数百枚の大著で、特定の作家について「この件についてそこまで言及するのか!?」といった印象を与える論文だった。その分野で世界一であることは重々了解することができた。