昨夏の台湾訪問時、台北駅から続くメーン…
昨夏の台湾訪問時、台北駅から続くメーンストリート沿いにある工学系大学に立ち寄った。学生らはラフな格好だが礼儀正しく、矜持(きょうじ)さえ感じられた 。
台湾の経済発展は目覚ましく、大きな期待を背に、学生らは自ずと将来の社会的エリートとしての自覚や気負いを持つのだろう 。
昨年6月、台湾が中国と調印した「サービス貿易協定」の承認に反対し、立法院(国会)議場を占拠していた学生らが先日、3週間ぶりに退去した。国の機関を機能不全にしても当局が強制排除できなかったのは、一般民衆の学生に対する寛容なまなざしがその理由の一つだろう 。
学生らが反対している貿易協定は台湾と中国が相互にサービス産業の企業に市場参入を認める協定。4年前に発効した中台間の事実上の自由貿易協定(FTA)に当たる「経済協力枠組み協定(ECFA)」の柱の一つだ 。
これに対し台湾の中小サービス企業が打撃を受け、中国にのみ込まれるとの懸念から、学生の不満が爆発した。王金平立法院長(国会議長)は協定内容を監視する法律制定まで、サービス貿易協定の審議を再開しないと約束した 。
台湾はECFAを締結し、対外関与の自由度が高まった。昨年のニュージーランドとのFTAに相当する経済協力協定締結もその成果である。とはいえ、中国との経済関係強化が統一につながることへの警戒心は強い。今回、台湾の複雑な事情を垣間見た思いだ。