元交際相手の裸の画像などをネット上に載せる「リベンジポルノ」が急増している。
エッセイストの平松洋子さんが、著書『一生ものの台所道具』(新潮社刊)の中で「道具は、使い手と目的にぴしゃりと合った機能を備えている」「しゃもじには、弾力性と強度を兼ね備え、水気に強いマツやホオ、サクラや竹。…すりこぎには堅牢なうえ、食べものの毒気を消すといわれるサンショウなど」と書いている
料理道具でなくても、生活用品一つ一つに使用目的があり、それを賢く使ってこそ目的にかなう。当たり前の話であり、通信手段として定着したインターネット交流サイト(SNS)についても同様なことが言えるが、それがなかなかできないでいる
元交際相手の裸の画像などをネット上に載せる「リベンジポルノ」が急増している。昨年1年間に警察に寄せられた相談が1628件で、5年連続最多を更新した
年代別の被害者は20代が647件で最も多く、20歳未満が429件と続き、合わせて6割を超えた。腹立たしいのは「道具」のあるべき使用目的を曲げて自らの欲望を満たし得意がる加害者の鈍感さだ
一事が万事、情報通信機器を利用した犯罪は巧妙、複雑化している。人間自身の道徳、倫理性が技術の進歩に追い付かない事態と言えようか
今日の情報革命によって情報通信技術が一気に花開き、数多くの「道具」が発明された。SNSも本来の目的に沿って使えば、人と人とが調和する世界をつくることも夢ではない。情報革命の理念形成を怠ってはならぬ。