【上昇気流】新型コロナウイルスワクチンの早期実現への貢献で一躍世界に知られることになった遺伝物質「メッセンジャーRNA(mRNA)」


新型コロナウイルスワクチンの早期実現への貢献で一躍世界に知られることになった遺伝物質「メッセンジャーRNA(mRNA)」。これを利用したワクチンの基礎技術を開発した米ペンシルベニア大のカタリン・カリコ特任教授らに2022年の日本国際賞が授与されることが決まった。

mRNAは新型コロナウイルスのスパイクタンパク質(ウイルスが人間の細胞へ侵入するために必要なタンパク質)の設計図となる。このワクチンを注射すると、体内で抗体が作られ免疫ができる。

薬は体外から投与するのが常識だったが、これはいわば体の中で薬が合成されるという仕組み。タンパク質レベルの物質をうまく操作し可能になったのだが、こんな手があるのかと思わせる。

現代医療と言えば、今年になりもう一つ驚かされたのは、米メリーランド大メディカル・スクールの医師が豚の心臓を人間に移植したニュース。今その経過を見ている段階だという。臓器移植では、拒絶反応の問題が一番大きいが今回、豚の心臓の遺伝子を10カ所改変し適合させた。

遺伝子導入豚を用いる異種移植は、バイオテクノロジーが生み出した最先端の産物だが、安全性や医療における倫理といった領域で想像したことのない新しい問題を提起している。

米国では臓器移植の待機患者が9万人余に達するが、ドナーはなかなか見つからない。ならば動物でというわけだが、一般社会に対し分かりやすい説明が必要だ。