【上昇気流】ロシアが遂にウクライナに侵攻した。西側首脳との話し合いや再三の警告を嘲笑うかのように。


ロシアが遂(つい)にウクライナに侵攻した。西側首脳との話し合いや再三の警告を嘲(あざ)笑うかのように。一時代前には考えられないようなことが現実に起きている。

米、ウクライナ「侵攻」判断で慎重姿勢

米初代大統領ジョージ・ワシントンの誕生日を記念する祝日の21日、閑散としたホワイトハウス記者会見室のモニターに映るプーチン露大統領のウクライナ東部独立承認の臨時ニュース(UPI)

プーチン大統領はウクライナ全土を占領する意図はないと言っているが、主権国家に対する明らかな侵略行為を断じて許してはならない。

プーチン氏はかつてソ連崩壊を「20世紀最大の地政学的悲劇」と述べた。小泉悠・東京大学先端科学技術研究センター専任講師は、サントリー学芸賞を受賞した『「帝国」ロシアの地政学』で、その後に続く「数千万の我が国民と同胞が、ロシアの領域外に居ることになってしまった」という一言が重要だと述べている。

ソ連崩壊でロシア国外に住むことになった2600万人とも言われるロシア系住民のことだ。軍の派遣を正当化するため、ロシアはウクライナ東部の親ロシア派の要請を挙げている。

この地域をロシアが併合するには至っていないが、かつてヒトラーが行ったチェコスロバキアのズデーテン占領が思い浮かぶ。ドイツ系住民が多数を占め、ドイツの併合を望んでいることを理由に、ヒトラーはミュンヘン会議で併合を要求。英仏両首脳はこれ以上の領土要求をしないことを条件に併合を認めた。

これがヒトラーを増長させ、第2次大戦の誘因となった融和政策として後世批判された。対露経済制裁を発動する西側やNATO(北大西洋条約機構)諸国は、ミュンヘン会議の教訓を忘れてはならない。