【上昇気流】海外の治験に頼っている現状
衆院予算委員会の新型コロナウイルス対策に関する参考人質疑で、河野茂・長崎大学長が「パンデミック(世界的大流行)を含めた感染症の迅速な情報の収集、解析、対応作成は国防の要」と訴えた。その中で「国産治験薬の早期承認の仕組みの導入」を挙げ、海外の治験に頼っている現状を批判した。その通りだ。
今、国内の治験の遅れで最も影響を受けているのが、2015年ノーベル医学生理学賞を受賞した大村智・北里大特別栄誉教授の開発した「イベルメクチン」だろう。寄生虫感染症治療薬だけでなく、ペニシリン級の多機能医薬品として知られる。
一昨年来、このイベルメクチンを使用し、インド、ペルー、インドネシアなどでコロナ感染者が激減した。わが国では治験がなされていなかったため、インドから個人的に輸入し治療に使っている人が少なくない。
治験には人材も割き相応の費用が掛かるため、パンデミック時に医療と同時進行するのは極めて難しい。ようやく昨年7月、医薬品メーカーの興和株式会社(本社=名古屋市)が治験を始めた。
この後、非臨床試験で、イベルメクチンの「オミクロン株」への抗ウイルス効果が確認された。今後、臨床試験の結果などを加えることになる。
イベルメクチンがコロナ治療薬として国に速やかに承認されることを願いたい。ワクチンや治療薬の開発など感染症対策は、国防懸案として産官学が一致協力して行っていくべきだ。