米ハーバード大やスタンフォード大などの…
米ハーバード大やスタンフォード大などの研究者たちによって「原始重力波」が発見されたとして話題を呼んでいる。
大気の安定した南極の地に電波望遠鏡を設置し、精密な観測とデータ解析によって見つけたものだが、今後の分析いかんで約138億年前の宇宙開闢(かいびゃく)の姿がより正確に分かると期待される。
宇宙の始めにビッグバンという大爆発があったのはよく知られている。ただしビッグバン以前の、ごくわずかな時間に宇宙の種が急膨張(インフレーション)したと考えなければ辻褄(つじつま)が合わないとされてきた。
30年ほど前、宇宙物理学者の佐藤勝彦氏らが提唱した「インフレーション理論」である。今回観測されたのは、同理論で急膨張に伴って生じるとされている原始重力波が「宇宙背景放射」と呼ばれる電波を揺るがせたことによって起こる「Bモード偏光」という現象だ。間接的に原始重力波の存在も明らかになった。
これまで重力波は直接観測されておらず、先進国が巨額を投資し熾烈(しれつ)な競争が繰り広げられている。今回の観測で拍車が掛かるだろう。わが国でも東大などが岐阜県に重力波望遠鏡「KAGRA(カグラ)」を建設中だ。
宇宙物理学者の池内了氏の新著『宇宙論と神』(集英社新書)に「神と宇宙は相性がよい」とある。ともに遠くにあって直接の認識はできないが、その働きかけが似ているからだ。新しい科学の時代と言えよう。