【上昇気流】希少金属獲得への道しるべ
わが国では名を成すメーカーや商社でも、先の見通しが立たないと新規の技術開発になかなか動きださない。例えば国際宇宙ステーションでは、これまで新素材や治療薬の開発が見込まれる無重力実験に企業投資が呼び掛けられてきたが、反応は渋い。
海底資源開発でも同様だ。日本の排他的経済水域には、レアメタル(希少金属)やレアアース(希土類)などの鉱物資源が豊富に手付かずのまま眠っている。しかし掘削し利益を得ようとすると話は別で、企業は様子見だ。
このままでは戦わずして海外との競争に完敗してしまう。希少金属のリチウムやコバルトは蓄電池に利用され、希土類のネオジムは電気自動車のモーターに使う磁石の原料になる。ハイテクや環境技術の分野で、欠ければ何ひとつ製品が作れない金属ばかりだ。
政府はこのほど、独立行政法人の石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)が鉱山の探査・開発で過半の出資ができるようにすることを決めた。国を挙げて深海資源の権益を保護し、さらに企業に開発や投資を促すためだ。
海外の資源メジャーに比べ、わが国の企業は資本力や収益力が劣り、彼らと肩を並べるには確かに力不足の一面がある。探査・開発を先導するJOGMECの役割は重大だ。
日本はかつて半導体開発で官民一体の成功体験がある。国内で資源開発を進めるとともに、政府は資源外交を通し希少金属獲得への道しるべを付けるべきだ。