【上昇気流】大阪市北区の雑居ビルで24人が死亡した放火殺人事件


大阪市北区の雑居ビルで24人が死亡した放火殺人事件。火元のクリニックに液体入りの紙袋を持ち込み火を付けたのは、患者の男とみられ、液体はガソリンだった可能性もある

火災があったビルで救助活動をする消防隊員ら=17日、大阪市北区(市民提供)

毒性の強い一酸化炭素が一瞬で大量に発生し、すすで視界も奪われたため被害が拡大したとみられる。理不尽極まりない犯行の巻き添え被害であり、何とも悔やまれる

その上で言うと、雑居ビルやペンシルビルでは、非常階段が狭く避難経路の問題が常にネックとしてあり、一層の防災対策があって然(しか)るべきだった。今回、火災はエレベーターと非常階段のある出入り口付近で起こったため、避難者は室内の奥に押し込められた

逃げた先に非常口やロープなどの避難用具があれば、全く違う展開になったのではないか。70平方㍍ほどの密閉された所に20~30人いたのも普通の状態ではないように思う

2001年の東京・歌舞伎町の雑居ビル火災を受け、消防法が改正されて消防機関の立ち入り検査が強化されたし、当のクリニックに法律違反があったわけではないが、自主的な防火の備えで工夫が欲しかった

今から半世紀も前には、よその施設に足を運んだり宿を取ったりすれば、まず非常口を確認し、火が出ればどうするかなど寝ていても心配したものだ。ところが今日、建造物の多くが耐火構造になったため、ハード面に安全を頼り過ぎてしまうきらいがある。「火の用心」の声を掛け合い危機意識を強めたい。