何を言いたいのかよく分からない文章が…


 何を言いたいのかよく分からない文章がダラダラ続くうちに突然、文意明瞭で見事に核心に切り込んでいく文章に変わって、強い違和感を覚えたことがある。学生のレポートを読んでいた時の経験だ 。

 読み続けるうちに、どこかで読んだ記憶があるようにも思えてきた。「もしや」と思って、夏目漱石の作品が収録されている文庫の著名な批評家の手になる解説に目を通すと、レポートと一字一句違わぬ文章が相当部分見つかった 。

 今は「コピペ」と呼ばれるが、当時はそんな言葉もなく、レポートも手書きだった。剽窃には違いないので、就職も決まっていたその学生に、レポートの枚数を2倍とし、速達で送るよう伝えたことがある。評価は、合格最低点の「可」 。

 STAP細胞で問題となっている小保方晴子さんが提出した博士論文の一部に、本人以外の人物が書いた文章が引用元を明示することなく使われていることが明らかになった時、ふとそのレポートのことを思い出した 。

 「コピペ」は「コピー・アンド・ペースト(貼り付け)」のことで、学生たちの間で時に行われる。全く同じレポートを別々の教員に提出したところ、教員同士の雑談から発覚して、共に不合格となったケースもある 。

 文学新人賞の二重投稿が露顕して、共倒れに終わったこともあった。コピー作りに手数がかからなくなった時代の、ありがちなことではあるが、いただけない話だ。