【上昇気流】夢の正体


夢は「第二の人生」と言われる。それほど身近なものなのに、正体が一向に分からない。そんな中、「夢とはこういうもの」との解答を与えてくれる本が出た。『夢を見るとき脳は』(紀伊国屋書店/近刊)と題する本は、心理学者(カナダ)と精神医学者(米国)2人の共著。

夢は睡眠時に脳内で行われる「弱い連想」の結果というのがこの本の趣旨だ。眠っているのだから、覚醒時のようには意識が働かない。だが24時間働いている脳は、低い意識の中でも、脳内の記憶と記憶の結び付きを模索する。それが「弱い連想」だ。

関連性が弱いから、目が覚めてみれば奇妙な印象になる。それでも夢を見ているその瞬間は、夢を真実と受け止める。最小限のリアリティーが夢にはある。

夢の材料は各人の現実生活にある。情報の断片であってもOK。どうやら脳は、体験を直接再現するのではなく、脳内にバラバラに記憶されている夢の素材を「弱い連想」によって夢という形で表現するようだ。

弱いといっても連想には違いないのだから、リアリティーも根拠もある。将来起こるであろう危機的な状況に対する演習の意味があるとの著者の見解も示されている

「これで夢の正体が全て解明された」というわけにはいかないだろうが、夢の経験上、符合することが多い。「夢の真の意味」を求める傾向があるが、そんなものはないとも著者は言う。「モナリザの真実」が存在しないのと同じ。そこは納得だ。