【上昇気流】北京冬季五輪の「外交ボイコット」


米国に続き英国、オーストラリア、そしてカナダが北京冬季五輪の「外交ボイコット」を発表した。中国外務省は「間違いなくその代償を払うことになる」と強く反発。さらに「日本の五輪開催を支持した中国に、今度は日本が信義を示す番だ」と凄(すご)んできた

ほとんどやくざ映画のセリフである。五輪を外交的な貸し借りのように言うが、問題はウイグル人のジェノサイド(大量虐殺)という大犯罪にどう態度表明するかということだ。

思い出すのは、かつて天安門事件に抗議して世界が対中制裁を行っている時、中国が日本を突破口にして国際社会に復帰したことだ。日本はその二の舞いを演じてはならない。

安倍晋三元首相は、BSフジの番組で「首相、閣僚が行くのは国の意思表示になる」と語った。それが中国のウイグル弾圧を是認することになると示唆し、慎重な対応を求めた。安倍派の会合では外交ボイコットについて「日本の意思を示す時は近づいているのではないか」と政府に早期の対応を求めた。

北京市朝陽区にあるオリンピック公園=2021年8月7日(UPI)

難しい選択を岸田文雄首相は迫られている。衆院本会議では「適切な時期に五輪・パラリンピックの趣旨・精神や外交上の観点などを総合的に勘案し、わが国の国益に照らして自ら判断したい」と改めて述べた。どのようにでも取れる言葉を選んでいる。

岸田首相には長く広い眼(め)で見た国益で判断してほしい。自由主義諸国から日本が残念な国だと言われない決定を下してもらいたい。