論文作成者の未熟な人間性が浮き彫りになった…


 論文作成者の未熟な人間性が浮き彫りになった「STAP細胞」に関する不祥事。このほど開かれた理化学研究所関係者らの記者会見で、川合真紀・理研理事が「早急に理研の倫理風土を改めるべくアクションを起こす」と話した。

 半面、理研のようなプロ集団の中で科学者たちにどんな倫理教育を施していけばよいのか、にわかに考え付かないといった戸惑いも会見からは感じられた。

 例えば企業の生産現場であれば工程管理の下、作業手順の見直しなどが行われ、それに合わせた管理者による作業員たちの意識改革も進みやすい。ところが科学者間では、一人ひとりの倫理観をチェックする習慣はあまりなく大きな課題だ。

 STAP細胞は若い女性研究者による画期的な発見として話題を呼んだが、論文での重要画像の流用などによって理研の威信は傷ついた。日本の科学界全体への信頼が損なわれかねない事態だ。再発防止への取り組みを徹底しなければならない。

 今回の不祥事では、理研の危機管理の在り方も問われている。論文への疑義に対して理研は当初、「単純なミス」としていた。もう少し早い段階で対応することはできなかったのか。

 倫理教育に関しては今日、組織内の一人ひとりの役割が増しており、こうした状況に応じた方針を打ち出す必要に迫られている。そのためにも、理研はまず不祥事の全容解明に全力を挙げるべきだ。