【上昇気流】売れ残った魚はどうするのか


スーパーの鮮魚売り場へ閉店間近に行くと、あの売れ残った魚はどうするのだろうと気になっていた。先日地方のスーパーに入って、メジナが並んでいるのが目に留まった。釣りの対象としては人気の魚だが、食用としてはあまり人気がない。翌日、同じ魚売り場に行くと、焼き魚になって売られていた。

生の魚は鮮度が命だ。売れ残りはその日のうちに焼き魚や干物にして売るのは、普通に行われていることだろう。焼き魚の方が手間が省けていいという人もいる。店の側としては手間がかかり大した利益になるとは思えないが、食品ロスを減らす努力の一環である。

こうした努力はさまざまな形で行われている。横浜南部市場内の水産会社がマグロやサーモンを加工する際に出る端材で、ハンバーグなどを作って商品化しているという。

魚に恩義を感じている漁師や釣り人は、魚の身はもちろん、頭や鰭(ひれ)の付け根部分、そして内臓などをほとんど捨てずに利用する術(すべ)を知っている。そして、そこにこそ美味があることも。最近はすし店や料理屋でもよく出る「あら汁」も、元は漁師が船の上などで作った料理だ。

希代の美食家北大路魯山人も、アユの美味(おい)しさははらわたにあると強調。「頭と腹の部分を食い残し、背肉ばかりを食うようなのは言語道断で、せっかくの鮎も到底成仏しきれない」(『魯山人味道』)と言っている。

食品ロスを減らすことと美食は矛盾するものではないようだ。