将来の医療システム


全国紙に重粒子線を使ったがん治療を行う医療施設の広告が載っていた。重粒子線は文字通り重い粒子線のことで、患部だけに打撃を与えられる最新の治療法だが、既に一般化している。特にがんなどで組織の深部が侵されている場合、有効に働くと言われる。

かなりの高額治療の一つで、これまで一般紙で宣伝しているのを見たことがなかったので目に付いた。病院施設やその治療内容のPRは、病院の差別化につながると意見する医療関係者もいて、広告は自主的に抑えられてきたようだ。

しかし、医療界に健全な競争意識を持ち込むことは決して否定されるべきことでない。第一に重粒子線治療など医療技術の開発費は膨大であり、その費用を相当に回収しなければ病院経営は成り立たないという市場の論理はここでも生きている。

安倍晋三政権時、社会保障政策の一環として医療の営利・産業化政策が行われた。2025年には団塊の世代が75歳以上となり、一段と超高齢化が進む。医療費削減のためにも医療側の改革を促している。

病院が情報を開示したり適度な宣伝を行ったりすることは、患者側の自主的な治療法選択に便宜を図り、医療の恩恵がより多くの人に広がることにもつながる。

その政策は将来の医療システムの方向を見据えてのことであり、今般の新聞広告などはその影響とみれば理解できる。健康に関する人々の自助を促すためにも、良い意味の病院の差別化は必要なことだ。