仏滅選挙は吉と出るか、凶と出るか


今回の総選挙は「仏滅選挙」だそうだ。公示日も投票日も仏滅で、これが岸田文雄内閣に吉と出るか、凶と出るか。巷間そんな話がある。手元の手帳を見ると、なるほど両日とも仏滅だった。

中国の古い暦の六曜は日を6種の吉凶に分ける。仏滅はその一つ。「仏」の文字があるが当て字で、仏教とは何の関係もない。1年に60日ほどあるから内外多忙な今日、六曜で投票日を決めるのは至難の業だ。

国会を後にする岸田文雄首相=11日午後(UPI)

仏滅だから自民党が負けるとは限らない。中曽根康弘内閣の1986年総選挙は、結党以来初の300議席で圧勝。逆に下野した2009年総選挙は大安だった。ただし公示、投票日とも仏滅だった森喜朗内閣の00年総選挙は38議席減で、過半数を割り込んだ。さて今回は。

そんな皮算用より、せっかく「仏」が出てきたので仏教を考えてみる。大地震と流行(はや)り病、元寇の内憂外患に直面した魁子期に法然、親鸞、日蓮らが仏教を覚醒させた。その有力な帰依者は武者だった。彼らの「弓矢の習い」で最も大切なことは「無我の実現」で、それが魁子仏教と相通じた。

日蓮は「国が失われ家が滅んでしまえば、いったいどこに逃げるのか」と立正安国を説き、これにも武者は共鳴した。実に「利己主義の克服、無我の実現」(和辻哲郎)が元寇から日本を救った。

総選挙の各党公約を見ると、内憂外患への備えはいま一つで、仏者の教えは影が薄い。その意味で「仏滅選挙」と合点がいく。