動物に出会う機会


山登りをしていて動物に出会う機会は結構多い。雪の降り始めた時期の飯豊山塊で、山形県側のブナの森を下っていた時、ニホンザルの群れが現れ、枝から枝へ飛び移りつつ、いつまでもわれわれに付いてきた。

動物との出会いは、場所と時期と共に記憶に残っている。雪山で足を取られて思うように進めないウサギ、崖の上からわれわれを見送っていたカモシカ、岩登りをするそばで飛び回るイワツバメ群。

しかし、彼らの死体に出会った記憶がない。こうした体験は、動物写真家、宮崎学さんの場合も同様だった。東京都写真美術館の「イマドキの野生動物」と題する写真展で、この問いに答える作品が展示されている。

宮崎さんは、その理由は死体そのものにあるようだと考え、山で作業する人の協力を得て死体を見つけ、あらゆる変化をカメラに収めた。使ったのは自動撮影カメラだ。その一連の作品が「死」だ。

数々の美しい作品の中で、思わず目を背けてしまったシリーズ。雪に埋もれたニホンジカの死体を、1月20日から8月23日まで記録。進行に従ってカケス、タヌキ、テンが来て食べ尽くしてしまう。

「死を食べる」ではキツネ、ニホンジカ、タヌキの死が語られる。死体処理係の出番は分かれていて、死は他の生命を活(い)かし、生と死が寄り添う世界だと証明した。その期間は妊娠期間とほぼ同じことも発見。最後は、初めの無垢(むく)の自然に戻る。実に神秘的だ。10月31日まで。