静岡県熱海市の土石流災害で、開発業者が…


 静岡県熱海市の土石流災害で、開発業者が搬入した大量の盛り土が崩落し「人災だ」という声が出ている。業者は市への届け出を超える面積の森林を伐採していたし、盛り土も県の基準を超える量だった疑いがある。

 この間、盛り土への産業廃棄物の混入なども発覚し、自治体は繰り返し行政指導を行ったが、工事の中止要請には従わなかったという。業者の悪質さは論外だが、防災を軸とした県や市の日頃の行政のあり方に問題はなかったか。違法行為に対して罰則のある措置命令を出し、断固阻止すべきだった。

 もう一つ、災害時の市の対処にも疑問がある。避難指示が出されなかったことだ。静岡地方気象台は市に土砂災害の発生リスクを3回伝えていたのに避難指示が発令されず、多くの犠牲者が出た。

 熱海市長は会見で雨量のピークの判断で迷いがあったことに言及している。降雨量の急激な増加で避難指示を出すタイミングを計るのが難しかったのは確かだろうが、レベル4の土砂災害警戒情報を受けても、避難指示を出さなかったことには疑問が残る。

 昨年、熊本県の山間部を襲った豪雨では、国から県に管理が移行した多くの中小河川で被害が発生したが、県の管理能力が落ちていたことが明らかになった。

 地方自治が言われ、自治体への砂防や河川改修、森林管理の移行が続いているが、危機管理行政についての非力が目に付く。気候変動が深刻化しているだけに不安が先立つ。