東京から南へ約1000㌔、小笠原諸島・父島の…
東京から南へ約1000㌔、小笠原諸島・父島の西北西約130㌔の海上に位置する西之島。新しくできた島が2013年11月以降噴火を繰り返し、従来の西之島と一体となって陸地面積は4・1平方㌔にまで拡大した。
19年9月の段階で東京都は公報で、小笠原村父島字西之島での「新たな土地の発生の確認」を告示している。陸地面積拡大で日本が管轄する水域はそれ以上に拡大する。排他的経済水域(EEZ)の面積は約46平方㌔拡大した。
領土・領海の拡大は喜ばしいことだ。しかしそれにも増して西之島は、学術上、実に貴重な島であることを、NHKのEテレで放送された「激変する西之島~太古の地球に出会う旅~」を観(み)て知った。
その学術的な価値は二つある。一つは40億年前の地球で大陸がどのようにできたのか明らかになること。もう一つは、岩石しかない不毛の大地に生物が生態系を作っていくプロセスを観察できることだ。
とりわけ火山学者・田村芳彦さんの「西之島で地球初期の大陸誕生が再現されているのではないか」という言葉が眼(め)を開かせてくれた。田村さんは大陸を作っている安山岩の溶岩が西之島で噴出していることに着目。火山島でこうした溶岩が噴出するのは稀(まれ)で「ダイヤモンドの価値がある」と喜ぶ。
大陸誕生の様子を示しているかもしれない絶海の孤島西之島は、4000㍍の海底火山の頂上にすぎない。生きた地球の営みと海の広大さが思い浮かぶ。