都内のホテルで、令和2年度俳人協会四賞授与…


 都内のホテルで、令和2年度俳人協会四賞授与式が行われた。選考会が俳句文学館(東京・新宿区)でオンラインで開催されたのは1月23日。授与式は3月の予定だったが、新型コロナウイルス対策のため延期されていた。

 規模はいつもより小さく、懇親会もなかったが、活気と熱気のあふれる会となった。祝辞や謝辞の時間が多く取られ、関係者による称(たた)える言葉も多彩で、句会の熱気が再現されたかのようだった。

 第60回俳人協会賞を受賞したのは、野中亮介さんの句集『つむぎうた』である。選考委員長の小澤實さんは「とりわけ突き抜けた一冊、全会一致で決定」と報告。「山出づる真水のこゑや初硯」を例に詠まれた山河の存在感を称えた。

 第44回俳人協会新人賞は、安里(あさと)琉太さんの句集『式日(しきじつ)』と篠崎央子(ひさこ)さんの句集『火の貌』。選考委員長の三村純也さんは書簡で、安里さんを「とてつもない才能」と絶賛し、篠崎さんを「天性の詩人」と称えた。

 第35回俳人協会評論賞は、井上弘美さんの『読む力』と南うみをさんの『神蔵器(かみくらうつわ)の俳句世界』に。二人は京都の「第五の会」で一緒で、井上さんはその会のフィーバーぶりを受賞作の背景として語った。

 興味をそそったのは、安里さんの成長過程だ。高校2年生で俳句を始め、俳句甲子園に出場したが、「遅すぎた」と回顧する。出場者らの多くは中学生の時から研鑽(けんさん)を始めている。訓練に次ぐ訓練、研鑽に次ぐ研鑽。俳句もまた凄(すご)い世界だ。