「大それたこと夫がせり藪柑子」。俳人の…
「大それたこと夫がせり藪柑子」。俳人の故鈴木鷹夫さんが昭和62年に「門」を創刊した時、夫人の節子さんが詠んだ句で、創刊のことを「大それたこと」と形容した。生活が一変したからだ。
節子さんも俳人だったので鷹夫さんは決意したのだが、妻は内心「大変なことになった、手伝わねばならない。家業はどうするのか」と多忙な身を振り返り、それでも「うん解った」と返答。
「春待つは妻の帰宅を待つごとし」と夫が詠めば、妻は「男とは夫のことなり燕来る」と詠んで、俳句仲間を脱帽させた。二人は人生の伴侶だったばかりでなく、家族も含めて作品のモデルであった。
鷹夫さんは平成25年に亡くなり、主宰を節子さんが継承した。が、昨年の4月号で400号を出した後、引退し、主宰を妹の鳥居真里子さんに譲った。新型コロナウイルスの世界流行のさなかのこと。
「門」創刊の時から夫妻に学び、編集を20年間務めた長浜勤さんは、昨年5月に「帯」を創刊して代表となり、主宰となった。節子さんは「幟立つごとく帯の木風匂ふ」の祝句を送った。今月で1周年を迎えた。
コロナ禍で集会も思うようにできないが、大志を抱く人もいるのだ。句会はできても、会員が一堂に会する大会はいまだできない状況。同人や会員の多くは鷹夫さんの門下で、俳句への思いも同じだ。「帯」今月号に「志立ててうぐひす間近なり」の句を載せた。大自然は一瞬も休まず運行している。