欧米に後れを取っているとされるワクチン開発…
欧米に後れを取っているとされるワクチン開発や生産体制の強化に向け、政府は本腰を入れ始めた。アジアに臨床研究や治験のネットワークを構築し、開発費用の一部を負担するという案も出ている。
国会ではようやく緊急事態についての憲法論議が広がり始め、疫病に対するワクチン製造の重要性が認められた。逆に言えば、新型コロナウイルス禍のような事態に遭遇しなければ危機管理についての論議は進まないのかもしれない。
海外ではこの間、日本人が開発に尽力したiPS細胞を利用して研究が進み、新型コロナワクチンが製造されている。それを思うと今後、わが国での見通しも決して悲観的ではなかろう。
かつて世界の科学者たちが参加し、2003年に人間の全遺伝情報(ヒトゲノム)解読を果たした研究のアジア拠点が、東京・港区の「ヒトゲノム解析センター」だった。ここから韓国、中国、タイ、マレーシア、シンガポール、インドネシア、インドなどの科学者に研究成果が発信される一方、アジア各地から情報が集まってきた。
責任者だった榊佳之・東京大名誉教授は「(ヒトゲノム解読のための)新しい共同研究やアイデアもその中から生まれた」と話していた。従来、アジアの科学者間の交流はごく限られていたが、これを機に科学研究に新しい潮流が生まれた。
ワクチン開発でもわが国がアジアの拠点になり研究を盛り立てていければ、コロナ禍を転じて福となすである。