宮城県南三陸町は「海のパイナップル」…
宮城県南三陸町は「海のパイナップル」と言われるホヤの名産地。東北地方でよく食されてきたが、もっと愛好者が多かったのは韓国だ。だが、東日本大震災の原発事故で韓国は輸入を停止し、国内では過剰供給に。
小紙「東日本大震災10年」のシリーズで、ホヤが大量に捨てられている現状を改善しようと、塩竈市でホヤ料理店「ほやほや屋」を開いた佐藤文行さんの活動が紹介されていた(3月8日付)。仙台にも2号店を出店しているという。
ホヤは体長15㌢ほどで、いびつな球形をし、暗赤色の表面にイボイボがある。人によって大好きだったり、見向きもしなかったりする。作家の故三浦哲郎さんは、グロテスクな姿を見て嫌悪感を抱いていた一人。
だが、戦時中にホヤを食べたくて我慢できず、兵営を脱走して市場に行ってホヤを貪り食ったという人の話を聞き、「火の中の細道」という小説を書いた。発作的に食べずにいられなくなる衝動を描いている。
インタビューした際に確かめてみると、三浦さんはそれまで食べたことがなく、想像で書いたそうだ。その後、食べてみて好きになったいう。気流子もどんな味か知りたくて食べてみた。
野趣があって、ほろ苦く、みずみずしくて、大海そのものの味だ。ワタリガニをキムチに漬けて生で食べる韓国人らも、好きになりそうだと納得できた。韓国では輸入停止のままだが、国境の向こうから、また食べたいという声が聞こえてきそうだ。