新幹線の車両技術などで知られる川崎重工業が…


 新幹線の車両技術などで知られる川崎重工業が、医療ロボット事業に力を入れている。昨年、国産初の手術用ロボットを発売し、新型コロナウイルスの無人PCR検査サービスの提供も目指すという。

 どんな職場でもスタッフたちに頭脳、体力、接遇の能力が問われるが、コロナ禍が続き、とりわけ医療現場にこの3要素やその連係は欠くことのできない事情が分かった。改めてロボット技術に光が当たっている。

 川重が開発する手術用ロボットの一例は、4本の腕で内視鏡や手術器具を精密に操り手術を支援するもので、医師はモニターを見ながら座って正確に操作できる。長時間、立ち仕事が常態の医師にもありがたい。

 ロボット医療は欧米で先行しており、それに比べ日本で進まないのは、患者側にロボットによる手術への忌避感があるのも一因と言われる。しかし、当のロボットは人間の技量を補強するもので、人間との協働作業に適しているという存在だ。あくまで人間が主体だ。

 わが国でのロボットの活用は、高齢化による患者の増加や医師減少に対応でき、医療改革のカギの一つになるのではないか。また介護現場でも、多様な作業ができるよう設計されたロボットという“柔らかい機械”を増やす方向での検討が必要だ。

 コロナ禍は、一般の人たちが医療現場の内情を知るきっかけともなった。多くの人々に医療サービスを提供できるロボットの開発に注目したい。