待ち遠しい蕗(ふき)の薹(とう)はなかった…
待ち遠しい蕗(ふき)の薹(とう)はなかったが、スーパーの惣菜コーナーに並びだした竹の子の料理や炊き込みご飯、菜の花のごま和(あ)えに加えて、タラの芽の天ぷらなど春の味覚がうれしい。今が旬の野菜は少し苦みがあり、それが冬の間に溜(た)めた脂肪を溶かして健康にいいとされる。
例年の旬はもう少し先だが、雪解けの土の中から顔を出す蕗の薹も、そろそろお目見えしよう。若芽に蓄えられた香りは、春の躍動を後押しするエネルギー源である。
蕗は刻んでみそに和えると、ほろ苦い味覚が春の訪れを告げる。キク科の多年草で、薄緑色の葉のコートに包まれた卵形の花芽を出す。山菜の代表だが、都会でも庭の草むらや公園の林などでよく見掛けるほど身近にある。
今シーズンの冬は12月中旬から1月上旬が特に寒かったとはいえ、今月はどうやら暖かいようだ。昨シーズン(2019年12月~20年2月)は、東日本の平均気温が平年より2・2度、西日本が2・0度高いという異常気象。統計開始の昭和21(1946)年以来、最も暖かい冬となった。
だが、寒がりにはよくても、それが過ぎるといいことばかりではない。昨シーズンの北陸は、降雪量も歴代1位となる少雪に泣かされた。深刻な雪不足で営業できないスキー場の中には、破産申請に追い込まれたところも出たほどである。
ほどほどの寒さに鍛えられながら、春を待ち、その味覚を楽しむのがいい。<春の寒さたとへば蕗の苦み哉(かな)> 成美(せいび)。