幕末維新の歴史の中で最大の功労者は誰か…


 幕末維新の歴史の中で最大の功労者は誰かということを、北岡伸一著『明治維新の意味』(新潮選書/近刊)を読みながら考えた。戦後しばらくまでは西郷隆盛の名前が大きかった。その後は坂本龍馬か。司馬遼太郎著『竜馬がゆく』(1966年)の影響が大きい。

 他に、井伊直弼、徳川慶喜、勝海舟の名前も浮かぶ。木戸孝允、高杉晋作、土方歳三も人気があるが、歴史上の功労者1人となれば、人気者とは違った要素が必要だ。北岡氏によれば、それは大久保利通だ。

 大久保がいなければ薩摩藩の中心は失われただろう、と北岡氏は言う。維新後の征韓論騒動の時、大久保は手続き的に問題があったやり方ではあったが、西郷ら征韓派に勝利した。結果責任からすればそれがよかった。

 自分の考えが「公論」であれば、非常の手段を取るのを大久保はためらわない。政治の中心にいたわけではない龍馬は手を汚す必要はなかったが、大久保は政治の当事者だったから、敵をつくるようなことをやるしかない場面も多かった。

 大久保は死後140年以上たった今も、西郷と比べて人気は低い。だが「人気よりも歴史的実績」という観点から見れば、功労第一との大久保評価は十分あり得る。

 日本史全体を振り返ってみれば、大久保は政治的人間として、藤原不比等→源頼朝→徳川家康に続く重要人物だったと思われる。大久保が内務省に出勤すると、省内は静まり返ったという。それも自然な話だ。