トルコ・イスタンブールのアヤソフィアは…


 トルコ・イスタンブールのアヤソフィアは、東ローマ帝国時代の537年に建てられたキリスト教(正教会)の大聖堂である。1453年にオスマン・トルコに征服されてからはイスラム教のモスクとなったが、帝国崩壊後、トルコ共和国を建国したケマル・アタチュルクの世俗主義政策によって博物館として公開されてきた。

 世界遺産にも登録されたこの建物を、イスラム主義を強めるエルドアン大統領は、モスクにする大統領令に署名。昨日、金曜礼拝が行われた。この建物が数奇な運命を辿(たど)るのは、東西文明の接点という立地にもよるだろう。

 天井ドームや内壁は美しいモザイク壁画で飾られているが、オスマン征服後は白い漆喰がその上に塗られていた。偶像崇拝を嫌ったためだ。

 再びモスクとして使われるようになり、モザイク画はどうなるのか危ぶむ声もあったが、礼拝時は布で隠す方法がとられ、普段はこれまでと同じく公開される。

 モスクとすることに対し各国からは、非難や失望の声が上がっている。しかし、トルコ国民がイスラム主義に傾いた責任の一端は欧州側にある。欧州連合(EU)加盟を再三希望してきたトルコに対し、加盟国は冷淡な対応を続けてきた。

 いろいろ問題はあるにしろ、北大西洋条約機構(NATO)のメンバーのトルコが受け入れられないのは、イスラム教国であることが大きい。EUは結局キリスト教国のクラブという印象をトルコ人に与えたに違いない。