小さな行動の積み重ねで、時間と共に自分に…
小さな行動の積み重ねで、時間と共に自分に有利な戦略的環境に変化させる――中国の国境戦略や海外工作は、このいわゆる「サラミ戦術」で、気が付けば相手国は身動きが取れなくなっている。南太平洋の島嶼(とうしょ)諸国への勢力拡大の工作もこれだ。
昨年9月まで台湾と外交関係を結んでいたソロモン諸島やキリバスは中国の圧力で断絶し、その後に中国と国交を結んだ。キリバスで今年6月行われた大統領選では親中派の大統領が再選した。
島嶼国の現状を紹介した「島国フォーラム&世界エコロジー」誌6月30日号によると、2016年まで大統領だったアノテ・トン氏は「大統領の離脱行為は、わが国と島国史上最も攻撃的なものである」と厳しく非難。「自由で開かれたインド太平洋」地域の団結の崩壊を憂慮している。
親日のトン政権時のキリバスは、日本を中心とした島嶼国との関係強化に取り組む戦略的パートナーの一人だった。またトン氏は、異常気象による地球環境悪化の弊を世界に訴え、平和活動家に与えられる「第1回鮮鶴平和賞」(15年)を受賞している。こうした環境保護活動の先細りも危惧される。
同国は人口約10万の小国だが、島々が散在することで約300万平方㌔のEEZ(排他的経済水域)を有している。同国のEEZ管理能力は小さく、外部の協力が必須だ。
冷戦終結後、米国の南太平洋への関心は薄れがちで、この地域の安全を維持できるか懸念される。