今年はドイツの宗教社会学者マックス・…


 今年はドイツの宗教社会学者マックス・ウェーバーの没後100年。6月14日が命日で、これを記念する出版物も刊行されている。ジャーナリズムでも引用されることの多い人物だ。

 神々の闘争、正当性、カリスマなど、彼の名と共に語られる概念は少なくない。しかしそれらの論文は常に論争の対象となってきたし、誤解を招くこともあった。その典型例が『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』だ。

 通常語られるように、両者に因果関係があることを論証しようとした論文ではない。彼は「親和性」という言葉を使う。政治学者、野口雅弘さんは『マックス・ウェーバー』(中公新書)で「まったく関係ない両者が相互に化学反応を起こす」と解説。

 政治哲学者ハンナ・アーレントは、彼のドイツ・ナショナリズムへの強いコミットメントの故に一貫して否定的で、『アメリカン・マインドの終焉』の著者アラン・ブルームは米国への悪影響の大きさを語る。

 ところで野口さんの著書によると、1984年にドイツの出版社からウェーバー全集の刊行が始まった時、注文の3分の2が日本からのもので関係者を驚かせた。

 欧米よりも日本でこそ人気があった学者だ。日本人の特殊な理解の仕方は、経済史家・大塚久雄の研究に表れていて、1960年代から70年代に学んだ学生は多い。日本の近代化が問題とされたからだ。没後100年、彼は今もその姿を変えつつある。