中国の全国人民代表大会(全人代)で、香港…


 中国の全国人民代表大会(全人代)で、香港での言論や集会の自由を奪う「国家安全法」の導入方針が採択された。香港の高度な自治を認める「一国二制度」を崩壊させる暴挙だ。国際公約をいとも簡単に踏みにじった代償は小さくないだろう。

 ポンぺオ米国務長官は「香港の自治と自由を根本的に損なっている」と非難。トランプ米大統領は週内にも「強力な対応策」を講じる考えを表明した。

 貿易戦争、先端技術詐取、さらに新型コロナウイルスのパンデミックをめぐる対立に加え、香港やウイグルなど人権問題も加わって、米中の対立は深まる一方だ。根底に世界の覇権闘争、相いれない価値観の対立がある。

 日本政府は、全人代の決定を「深く憂慮する」と表明。外務省の秋葉剛男事務次官が中国の孔鉉佑駐日大使に日本政府の立場を伝えたが、まだまだ生ぬるい感じがする。

 中国が国際ルールを何とも思わないのは、今に始まったことではない。南シナ海の軍事基地化を進めることを国際法違反であるとした2016年のオランダ・ハーグ常設仲裁裁判所の判決を「紙くず」と言って無視した。

 中国への経済的な依存の深まりと地理的な遠さから南シナ海問題にはたいして声をあげなかった欧州諸国。しかし、新型コロナでの甚大な被害、そして自由、人権に関わる香港問題でようやく、眼が覚めつつある。「異形の大国」との戦いは、トランプ政権下の米国だけの戦いにしてはならない。