今月3日に亡くなったタレントやしきたかじん…
今月3日に亡くなったタレントやしきたかじん(本名・家鋪隆仁)さんは、東西の温度差を思い起こさせる芸能人だった。関西では著名だが、東京のテレビ局のレギュラー番組がなかったため、関東では身近な存在ではなかった。
「東京嫌い」を公言していた。自分の名前を冠した番組が「関東で放送されるなら辞める」とも話していた。一方、東京への対抗意識が強い関西では人気があった。
関東と関西の芸風の違いは、はっきり存在する。関西で活躍した後、東京へ進出して成功を収めた芸人は「東京では前へ出るな」と後輩に教える。関西では積極的に「前へ出ろ」と言うが、東京ではそうしたやり方は嫌われる。
関西出身で東京で活躍中の別の芸人は、東京で成功する秘訣として「関西臭さを消せ」と後輩に求める。東西の笑いに関する感覚の違いを体感した結果の言葉だろう。
たかじんさんが関西中心に活躍したのは、こうした事情を知り尽くしていたこともあろう。東京に合わせた途端、自分の芸は違ったものになってしまうことを十分に認識していたのだと思う。
「東京一極集中」が進む中、自分が身に着けた文化にこだわり続けることで「東京以外」を選択することは、一つの挑戦だと言える。800年以上前には、京都の朝廷、鎌倉の幕府、平泉の奥州藤原氏が鼎立し、それぞれ独自の文化が発展した歴史的事実を思い返してみたい。