東京・新宿の寄席、末廣亭は20日までが正月…
東京・新宿の寄席、末廣亭は20日までが正月二之席。まだ鏡餅が飾られ、獅子舞も演じられる。新宿のど真ん中にもかかわらず、この建物の中だけは独特の時間が流れている。
その二之席で、久しぶりに落語界最古参、4代目三遊亭金馬師匠の高座を聞いた。落語ファンでなくとも50代後半以上なら、昭和30年代のNHKテレビの人気番組「お笑い三人組」でラーメン屋「満腹ホール」の金ちゃん役だった小金馬(当時)といえば、知らない人はいないだろう。
その金馬師匠は、現在84歳。数年前に膝を痛めたため、高座では釈台を前に置いて演じるが、芸の衰えは全く感じさせない。その日はお店噺「あんまのこたつ」を実に楽しく溌剌と演じた。
戦後を代表する名人の8代目桂文楽は、昭和46年の公演中に突然台詞が出てこなくなり、「もう一度勉強し直してまいります」と深々と頭を下げ、高座を下りた。それが最後の高座となった。その時、78歳だった。
落語は年を取るほど味が出てくる芸だ。「長生きも芸のうち」という言葉は、歌人の吉井勇が文楽に贈った言葉で、文楽はこれを座右の銘として芸に励んだという。
金馬師匠の人を不思議と愉快な気持ちにさせる芸風は、やはり心身の健康が支えているように思う。落語を聞いて笑うのも認知症予防にはよいという医者もいる。金馬師匠にあやかるためにも、時間の許す限り落語を聴きに行くこととしよう。