新型コロナウイルスの感染終息を願って、…


 新型コロナウイルスの感染終息を願って、全国各地の神社で、それまで途絶えていた神事などが復活している話を聞く。

 例えば、山形県鶴岡市の羽黒山蜂子(はちこ)神社では、神職と山伏によって早期終息を祈願する神事が行われ、福島県会津美里町の伊佐須美神社では、148年ぶりに疫病を鎮める「疫神斎(えきじんさい)」が催された。

 神頼みというと非科学的なことと思う人もいるが、昔の人は疫病は神の祟(たた)りと考えていたので、その怒りを鎮めるために神事を行った。日本三大祭の一つである京都の祇園祭も、最初は疫病退散が目的で行われた。

 気流子の住んでいる付近の無人に近い神社でも、夏の祭りの時には氏子などが集まり、神事を行っていた。神事の中心になっているのが、水を入れた大釜を沸騰(ふっとう)させ、その湯に榊(さかき)を浸して振りまく「湯立て神事」である。

 厳かに行われる一連の儀式に伝統の奥深さとそれを守り続けた人々の心が伝わってきた。神事が続いているのも、疫病の終息に効果があったからだと由緒書きにはある。もともと祭りは、五穀豊穣(ほうじょう)への感謝や疫病退散などのために神事として行われるものである。

 その疫病蔓延(まんえん)を鎮めるための祭りが、各地で「3密」回避のために中止の憂き目を見ているようだ。緊急事態宣言が首都圏4都県と北海道以外では解除されるなど、閉塞(へいそく)状態にも変化が見られるが、油断はできない。新型コロナ終息とともに伝統的な祭りの復活を望みたい。