山開きのシーズンがやって来た。例年だと…
山開きのシーズンがやって来た。例年だと群馬、福島、新潟、栃木の4県にまたがる尾瀬国立公園でも各登山口で山開き行事が行われ、残雪の状態やミズバショウの開花について話題になる。
だが、今年は違っている。新型コロナウイルス対策のために入山自粛が要請され、登山口への交通機関はストップ。山小屋でも営業を休止しているところがほとんどだ。尾瀬保護財団と環境省は「遭難しても救助体制はありません」という。
尾瀬への入山者は平成8年に年間64万人を数え、木道も山小屋も許容量を超えた混雑ぶり。その後は減少し続け、平成30年には約27万人に減った。今年はその数を大幅に減少させるだろう。
これはオーバーユースで負担になっていた自然界にとっては、しばしの休養である。しかし、そこを経済生活の舞台としている人にとっては、ありがたくないことである。この矛盾の解決こそ現代人の課題だ。
これは富士山でも同様で、山梨県側でも、静岡県側でも、登山道はこの夏、閉鎖されることになった。全ルートで山小屋も救護所もすべてが休業するという。昨年の場合、夏期入山者は23万人以上。
これらの人々を山小屋が受け入れるとすれば「3密」は不可避。密集、密接、密閉した空間に閉じ込めざるを得ない。その上、平地よりずっと気温や気圧が低いため、体調を崩す人が少なくない。登山史上、類例のない事態だ。自然と人間との関係を見直すべき時なのだろう。