テレビのワイドショーでキャスターが「これは…


 テレビのワイドショーでキャスターが「これはどう考えればいいのだろう?」と専門家(医学者)に問い掛ける。新型コロナウイルスに関するある発表について「○」なのか「×」なのかよく分からないと問い掛けたのだ。

 「○」か「×」かをはっきりさせない限り、主婦を中心とする視聴者には分からないという思いがあるようだ。受け取りようによっては「主婦はバカ」という差別にもつながりかねない際どい質問だ。

 ゲストの専門家は冷静に「言葉通り受け止めればいいのでは」と回答する。専門家はそれ以上は言わないが、心の中では「なぜテレビは、事実を事実として見ようとしないのだろうか?」と思ったかもしれない。

 とかくテレビは「○」とも「×」とも言い切れない「△」が苦手だ。この世の中は実は「△」だらけで「○」や「×」の方がむしろ例外的なケースはたくさんある。

 相手が未知のウイルスだけに「△」の度合いは相当高いはずなのだが、「白黒を短い言葉で明快に言い切らなければならない」という強迫観念は簡単には直らない。

 特に民放ではコマーシャルが頻繁に入るだけに、断定口調のコメントが多くなる。テレビ局の都合で人間の発言(思考)スタイルが一方的に決められる愚は、ここ半世紀ぐらいの歴史の流れそのものになっている。人間世界はテレビ局が考えるよりはもう少し複雑だ。「人間世界、一寸先は闇」という謙虚さが時には必要だ。