反体制派のデモ弾圧を発端としたシリアの…
反体制派のデモ弾圧を発端としたシリアの内戦は10年目を迎えた。アサド政権はロシアの後ろ盾で全土の7割を奪還したが、北西部のイドリブ県では攻防が続き、和平プロセスは停滞。
小紙「シリア 混乱終息見えず」(3月15日付)によると、内戦の犠牲者は38万人以上、近隣国などへ逃れた難民は560万人以上、国内避難民は610万人で、子供を含む1100万人以上に人道支援が必要だという。
昨年9月、この内戦取材で2012年2月に命を落とした英日曜紙サンデー・タイムズの女性記者メリー・コルヴィンを主人公にした英米映画「プライベート・ウォー」が日本で公開された。
1956年米国に生まれ、79年UPI通信社に入社。86年サンデー・タイムズ社に移籍し、世界中の紛争地で危険な取材を重ねた。2001年にスリランカ内戦の取材で左目を失明し、黒い眼帯がトレードマークに。
マシュー・ハイネマン監督が描くのは、残虐行為を見たことで心をむしばまれ、闇が宿る彼女の葛藤と苦悩だ。最後はホムス市で反政府勢力を取材し、衛星電話を介して英BBC放送その他に出演。死亡するのはその数時間後だ。
サンデー・タイムズに載せた絶筆は、砲弾と銃撃戦の中で書かれた。「人々の唇は、こう問い掛けている。“私たちは世界から見捨てられてしまったのか?”」と。英国プレス賞その他数々の賞に輝いたが、彼女の最後の言葉には未(いま)だ回答が与えられていない。