温室効果ガス削減を求める「パリ協定」が…
温室効果ガス削減を求める「パリ協定」が今年始まる中で、クリーンエネルギーの原子力発電推進派が世界各地で勢いづいている。
脱原発を求めていたドイツでは、与党内から公然と見直し論が出て、シュピーゲル誌は「党内で再び核エネルギーに目が向けられつつある」と情勢の変化を伝えている。世界有数の資源国のオーストラリアでも、原発が将来のエネルギー候補に浮上した。昨年の世論調査では原発支持が44%で、反対の40%を上回ったという。
すでにわが国では、環境問題が起きた昭和40年代から「資源論も重要だが、今後は環境論の立場から原子力利用が大切だ」(当時の政府見解)という認識があった。いま盛り上がる欧州世論の考え方を先取りしている。
ただし、日本でも「原子力は危険な代物で、社会生活に合わない」という国民感情は少なからずある。東京電力福島第1原発事故で住民の被曝(ひばく)量は非常に少なかったという科学的検証がなされたのに、被曝をめぐる風評被害が一向に収まらないのもそのせいだろう。
例えば、国連科学委員会は「福島での小児甲状腺がんと放射線被曝との関連は認められない」と断じている。しかし、チェルノブイリの子供たちと同様の甲状腺がんの多発をまことしやかに吹聴する向きがいるのは残念だ。
世界的な気候変動の脅威が急激に高まっており、原子力利用への消極的な姿勢について全世界で潮目が変わることを願いたい。