15ある国際連合の専門機関の一つで知的財産…
15ある国際連合の専門機関の一つで知的財産の保護や特許の運用などを担う世界知的所有権機関(WIPO)の次期事務局長選挙で、シンガポール特許庁長官のダレン・タン氏が当選したことに安堵(あんど)する国は多いだろう。タン氏は有力とされた中国の女性でWIPO事務次長の王彬穎氏を大差で破った。
この背景にあるのは、すでに国連4機関の事務方トップが中国出身者で占められている状況への日米欧の強い警戒感である。国際民間航空機関(ICAO)では、2016年9月の総会から台湾が締め出された。
国際電気通信連合(ITU)の事務総局長は、ITUと中国の「一帯一路」構想との連携強化を公言するなど露骨な中国寄りの姿勢が問題視されている。知的財産などの重要情報を扱うWIPOトップに中国人が就く事態だけは、米国としては何としても阻止したかったに違いない。
国務省に担当する専従組織を据えた米国は、各国への働き掛けを強めたのだ。今回の選挙では日本も日本人候補の擁立を図ったが、日米欧の支持する候補に一本化して協調路線を取った。
「(中国の)覇権主義的な動きを見れば、中国人が多くの国連機関のトップに就くことは警戒を要する事態」(本紙9日付社説)だからだ。
国連の各機関は本来、特定の国の国益に偏しないバランス精神で協調した公正中立な運営がなされるべきだ。そのトップは国家を超えた普遍的価値を体現する精神が求められる。