米ナイキの厚底シューズ使用の是非論があった…


 米ナイキの厚底シューズ使用の是非論があったが、東京マラソンは日本男子の記録ラッシュで、日本陸連マラソン強化戦略プロジェクトリーダーの瀬古利彦さんが「進化したシューズが前に比べれば良いのは分かっている。ただ、うまくシューズに合った走りをしたおかげでこういう記録が出ている。選手が努力した結果」と。

 瀬古さんは選手時代、運動量の上限ぎりぎりのところで試行錯誤を繰り返し、記録アップにつなげた経験の持ち主。「選手が努力した結果」の言葉に説得力がある。

 プロ野球の故野村克也監督が「野球は頭のスポーツ」と述べたのも、モノや道具は勝利の決定打ではない、成功は努力や意志の賜物(たまもの)だということだろう。

 戦国時代、織田信長軍が武田勝頼軍に壊滅的な打撃を与えた「長篠の合戦」では、鉄砲という武器数の差だけが強調されがちだ。しかし、多岐川恭著『武田騎兵団玉砕す』は少し違う。

 「『機先を制したい』という勝頼の思惑を利用し、戦場に誘い出せた」信長の作戦勝ちで「それがなければ織田側の敗北もありえた」と。さらに「火薬がなくては鉄砲は無用の長物である。そして火薬こそ、信長が意のままに独占できるものだった」と、信長の用意周到さ、近隣への支配力を勝因に挙げる。

 東京マラソンでは、旧式だが同じ厚底シューズを履いた元日本記録保持者の設楽悠太選手が注目されたが、結果は完敗。こちらは力不足と作戦負けの感が強かった。