信州大学医学部で運動科学を教えていた能勢…


 信州大学医学部で運動科学を教えていた能勢博さんの著書『ウォーキングの科学』(講談社)を読んで、昨年暮れからウオーキングを実行している。早歩き3分、ゆっくり歩き3分、これを5セット行い、週4回繰り返す。

 いろいろなコースを歩いてみたが、伸び伸びした景色のあるところ、車や人通りの少ないところを選ぶようになった。好んで歩くのは畑や果樹園、公園、造園業者の園がある一帯である。

 季節の変化を眺めるのが楽しい。農家の人たちが働いている様子も興味深い。しばらく立ち止まって見せてもらったのは、イチョウ農園での剪定(せんてい)作業だ。電動ノコで太い幹も脇枝も大胆に切っていく。

 おびただしい数の木がどんどん剪定されていく。作業が終わった樹木の面白い形をほれぼれする気持ちで眺めた。幹は人の背丈よりやや高いところ以上は伸ばさず、横へ向かう脇枝を活(い)かしていく。

 イチョウには雄木と雌木があり、雄木に実は実らない。それをどう区別するのか。枝が上向きに伸びるのが雄木、横に広がるのが雌木という俗説があるが、俗説を生んだ理由が剪定にあったと判明。

 剪定すると、同じ種類の木とは思えない形になるのだ。この農家では秋になると道端の自販機で実を売っている。肥料が行き届いて大きな実だ。ウオーキングの効果はこれからだが、風景を見る楽しさもある。農家の敷地の縁ではフクジュソウが絨毯(じゅうたん)のように咲き、剪定の情景と共に心にとどめた。